
AI検索や生成AIの普及によって、企業の情報の見られ方は大きく変わりつつあります。
これまでのWebマーケティングでは、SEO、SNS、広告、Googleマップなど、それぞれの施策ごとに成果を考えるのが一般的でした。どのキーワードで検索順位が上がったのか、SNSのフォロワーがどれだけ増えたのか、広告からどれだけ問い合わせがあったのか。こうした個別の指標をもとに施策を改善していくという考え方です。
しかしAI検索の登場によって、この構造は少しずつ変わり始めています。
AIはSEOやSNSといった施策を個別に評価するのではなく、企業に関する情報を横断的に読み取り、「この企業はどんな会社なのか」「信頼できる存在なのか」を総合的に判断しようとします。
こうした変化は別の記事でも触れましたが、今回考えたいのは「AIがどう評価するか」ではありません。
問題は、企業側の“考え方”がまだ変わっていないことにあります。
参考:AIは企業のどこを見て“信頼できる”と判断しているのか
目次
なぜ多くの企業は“施策思考”から抜け出せないのか
AIによって評価の仕組みが変わっているにもかかわらず、多くの企業は依然として「施策単位」でマーケティングを考えています。
KPIが施策単位で設計されている
「施策単位」でマーケティングを考えてしまう理由のひとつとして、KPIの設計にあります。
多くの企業では、SEOはSEO、SNSはSNS、広告は広告といったように、それぞれの施策ごとに目標が設定されています。
例えば、SEOは検索順位や流入数、SNSはフォロワー数やエンゲージメント、広告はCPAやCV数。
これらはどれも重要ですが、その結果として「施策ごとに最適化する」という思考が強くなってしまいます。
組織構造による分断
実務の現場でも分断は起きがちです。
例えば、SEOは社内担当、SNSは別担当、広告は代理店といったように、それぞれが独立して運用されているケースは少なくありません。
会議の場でも「SEOの数値」「SNSの数値」「広告の数値」が個別に報告され、それらが一つのストーリーとして語られることは少ない、という企業も多いのではないでしょうか。
短期成果への偏重
短期的な成果を求められる環境も影響しています。
「今月の問い合わせ数を増やす」「今期の売上を伸ばす」といった目標の中では、どうしても施策単位での改善に意識が向きやすくなります。
こうした背景が重なり、多くの企業が“施策思考”から抜け出せない状態にあるのです。
その結果、企業に何が起きているのか
では、施策思考のままマーケティングを続けると、企業にはどのような状態が起きるのでしょうか。
一見すると、施策はうまく回っているように見えることがあります。
SEO記事も更新している、SNSも動いている、広告も出稿している。
それでもなぜ、成果につながらないのでしょうか。
情報のズレが生まれている
こうしたケースでは、企業が発信している情報の全体像を見ると、ある共通点が見えてきます。
それは「企業としての一貫した像が見えない」という状態です。
例えば、Webサイトでは「高い専門性」を強調している企業があったとします。
しかしSNSを見るとカジュアルな発信が多く、口コミを確認すると「説明が分かりにくい」という評価が並んでいる。
ユーザー視点では“不安”に変わる
実際に問い合わせを検討しているユーザーの視点で見ると、このズレはよりはっきりと感じられます。
「専門性が高い会社だと思ったけど、実際はどうなんだろう?」と、無意識に不安を感じてしまうのです。
よくある失敗パターン
よくあるのが、「とりあえずSEO記事を増やす」「SNSを更新する」といった形で施策を積み上げていくケースです。
短期的には数値が伸びることもありますが、企業としてのメッセージが整理されていないまま発信を続けると、結果的に情報のズレが広がってしまうことがあります。
施策自体は頑張っているのに、企業としての姿がうまく伝わらない。
この状態では、ユーザーにもAIにも信頼されにくくなってしまいます。

これからの企業は「情報をどう持つか」で差がつく
AI時代において重要なのは、「どの施策をやるか」ではなく、「どんな情報を持っているか」です。
情報は“消費”ではなく“蓄積”される
企業が発信する情報は、一度発信したら終わりではありません。
Webサイト、SNS、口コミ、メディア記事など、あらゆる情報が蓄積され、企業の評価を形づくっていきます。
つまり、情報は“消費されるもの”ではなく、“積み重なるもの”になっています。
一貫した情報が“認識”を作る
例えば、ある企業が一貫して「丁寧な対応」を強みとして発信している場合、その情報はWebサイトだけでなく、SNSの投稿、口コミ、採用ページなど、さまざまな場所に残っていきます。
そしてそれらがつながることで、「この会社は対応が丁寧な企業だ」という認識が形成されていきます。
一方で、媒体ごとに異なるメッセージを発信している場合、その企業の特徴は曖昧になってしまいます。
この違いは、時間が経つほど大きくなります。
情報が積み重なるほど、企業の見え方に差が生まれていくからです。
“情報資産”とは何か
施策との違い
では、こうした文脈で語られる「情報資産」とは何を指すのでしょうか。
情報資産とは、単発の施策ではなく、企業の価値や強み、考え方を一貫して伝え続けることで蓄積されていく情報のことを指します。
例えば、「SEO記事を1本公開する」という行為は施策です。
しかし、その記事が企業としての考え方や強みと一貫した内容であり、他のコンテンツともつながっている場合、それは単なる施策ではなく“情報資産”として機能し始めます。
逆に、キーワードごとにバラバラに記事を量産しているだけでは、個別の流入は取れても、企業としての価値は積み上がっていきません。
時間軸の違い
施策と情報資産の違いは、時間軸にあります。
施策は短期的な成果を目的としますが、情報資産は時間をかけて積み上がります。
評価のされ方の違い
また、評価のされ方も異なります。
施策は個別に評価されますが、情報資産は企業全体として評価されます。
そしてAIは、その蓄積された情報のつながりを前提に企業を評価します。
情報資産を持つ企業と持たない企業の違い
情報資産を意識している企業とそうでない企業では、見え方に明確な違いが生まれます。
一貫した企業像があるか
例えば、ある企業はWebサイト・SNS・口コミすべてにおいて「丁寧な対応」という評価が共通して見られます。
どの媒体を見ても同じ印象が伝わり、「この会社は信頼できそうだ」と感じられます。
媒体ごとにバラバラになっていないか
一方で別の企業では、Webサイトでは強みが語られているものの、口コミでは別の評価軸で語られており、SNSでも一貫したメッセージが見えません。
信頼の差として現れる
この2社を比較したとき、ユーザーがどちらに信頼を感じるかは明らかです。
AIも同様に、こうした情報の一貫性や整合性をもとに企業を評価します。
だからこそ、情報資産の有無がそのまま企業の信頼性の差につながっていくのです。
これからのマーケティングは「施策」ではなく「設計」
ここまで見てきた通り、AI時代のマーケティングにおいて重要なのは、施策を増やすことではありません。
実際の現場では、「まずSEO記事を作ろう」「SNSを強化しよう」といった施策ベースの議論から始まることが多いですが、本来は「この会社は何を伝えるべきか」という整理から始める必要があります。
SEOをやるか、SNSをやるか、広告を出すか。
そうした意思決定はもちろん必要ですが、それはあくまで手段に過ぎません。
バズソルでは、マーケティングを施策の集合ではなく、情報設計のプロセスとして捉えています。
企業が発信するすべての情報は独立しているのではなく、一つの文脈としてつながっていると考えているためです。
バズソルが考える「情報資産」という考え方
バズソルでは、これからのマーケティングにおいて最も重要なのは「情報をどう蓄積するか」だと考えています。
企業が発信する情報は、その場限りで消えるものではなく、時間とともに積み重なり、企業の信頼やブランドを形づくっていきます。
そしてAIは、その積み重ねを前提に企業を評価します。
つまり、これからの時代は「どの施策をやったか」ではなく、「どんな情報を積み上げてきたか」が問われる時代です。
情報をバラバラに発信するのではなく、一貫した軸をもとに積み重ねていく。
その結果として形成されるものこそが、企業にとっての情報資産です。
まとめ
AI検索の普及によって、企業の情報は個別の施策ではなく、全体として評価されるようになりつつあります。
その中で、従来のような施策単位のマーケティングでは、企業の価値が正しく伝わりにくくなっています。
これからの時代において重要なのは、施策を増やすことではなく、企業としての情報をどのように設計し、積み重ねていくかです。
マーケティングは“施策”ではなく“情報資産”へ。
この視点の転換こそが、AI時代において競合と差をつけるための新しい常識になるのではないでしょうか。